タイトル、宣伝のタッチが、中味と大きく違っているような気がします。
スタイリッシュでダークな映画かと思いきや・・・
中味はその真逆、寓話的ではありますが
全体的にはヒューマンで、どちらかといえば素朴な映画です。
いえ、そういうのも好きですが。
千里眼と怪力男の運命が、
後のユダヤの別の国の人々の運命を象徴している等々、
ドイツ、ユダヤについての歴史、知識があれば
より深く見る事が出来るかもしれませんが、
その辺りの事前知識はそれほど多くは必要ないように思います。
実話が元になっているらしいです。
印象的なシーンのひとつ、というか何度か繰り返し出てくるシーンですが
クラブの客層の変化。
戦争が直接的に表現されている作品ではないですが、
物語の根幹をなす作品の背景、時代の背景、ナチスの台頭。
その来るべく暗黒の時代への予感を感じさせる、シーンです。
もうひとつは、嫌な感じの金持ちがゲッペルスに対し、
日本人の「粋」を君たちも見習えというような事を言ったとき、
「あなたのように莫大な財産があればそれで済むでしょうね」
と、ゲッペルスが皮肉と自重気味に微笑みながら、言った台詞が印象的です。
そこにはナチスが台頭してしまった背景の複雑さが現れていると思います。
格別面白かったという訳ではないのですが、この映画に好感が持てるのは、
主人公が実際に強靭な肉体を持つヨーロッパでは人気らしい
ワールドストロンゲストマン・コンテスト(なんだかは知りません)の
チャンピオンの方が演じていたり、
ヒロインが本当のピアニストの方が演じているところかもしれません。
ティムロス演じる千里眼の男もいいです。
大きな動きの無い作品ですが、淡々とした物語が好きな人には
割と行けるのではないかと思います。